Takumi’s blog

文章にして輝く思い出

俺は旅人でありたい

二連休の二日目。

一日目で仕事の休みが取れて、体力がありあまっている。
こんな日はカメラを持ってサイクリングにでも行こうか?
いや、無駄に体力を使ってしまったら明日からの終わりが見えない連勤に支障が出る。
まずは小松駅から歩いてカラオケにでも行って、その後はお散歩でもしよう。
俺はそう決心すると、カメラをリュックに詰め込んで部屋を出た。
 
粟津駅までは自転車で15分もかからない。
到着すると、金沢方面の電車が来るまでまだ20分ほどの余裕があった。
俺はリュックサックから小説を取り出し、表紙を数秒眺めてそれをひざの上に置いた。
そしてスマホを取り出し、少し弄ってポケットに入れる。
そしてまた小説を手に取り、数ページ読む。
そんな繰り返しで時間をつぶすのが意外と楽しい。20分はあっという間だった。
 
テッカテカの金属ボディに青い模様、そして性格の悪そうな目をした奴がやって来る。電車。
俺はいつもと同じように一両目に乗り込み、座席に座っている人の顔をじろじろと見ながら歩き、次の車両へと進む。
こいつじゃない、こいつでもない、、、こいつは、、、ちょっと惜しい。
結局一番後ろまで来てしまった。
北陸にはきれいな女性が多いが、まあ運の悪いときもある。
本当なら美女の隣に座り幸福感を味わいたいところだったが、今回は仕方なしにおっさんの隣に座った。
 
駅からしばらく徒歩で移動しカラオケに着く。受付の女は太ってて醜い。
「お前はまるで豚のようだな。カラオケじゃなく養豚場に行ったらどうだ?」という言葉を飲み込んで、
「一人で。会員です」と言った。
豚は言う。「機種はどれになさいますか?」
「DAMで」と俺。
「DAMは二種類ございますが、どちらになさいますか?」
「・・・なんだと?」
この返しには俺も困ってしまった。
もし間違えた選択をしたら、どんなDAMが待ち受けているのだろうか。
部屋に入ったはずが黒部DAMの淵に立っていたなんてことになったらシャレにならん。
そう考えた俺は、豚に言った。
「どっちがおすすめですか?」
豚は醜い顔で「こちらの方が新しいですよ」と言ったが、俺には「おにぎりが食べたいんだな」と言っているようにも聞こえた。
俺はその新しい方を選ぶと、豚は10番の部屋に行けと俺に指図をした。
渋々ながらそれに従い部屋に入ると、中はとても広かった。俺の住んでる寮の部屋の倍くらいあった。
俺はVIPだから真っ先に上座に座る。気持ちがいい。
 
そして次にタブレット式のリモコンを手に取ると、フィッシュアンドチップスを口に放り込み、それをバーボンで流し込んだ。
いや、もしかするとフィレオフィッシュアンドポテトとファンタグレープだったかもしれないが、誤差の範囲内だろう。
 
 
さて、一曲目は何を歌おうか。
そう思った俺の頭に浮かんだのは、オードリーの若林の顔だった。
違う、彼は歌手ではない。それにすごい音痴だ。
 
とりあえず履歴を見ていると、井上陽水の「少年時代」があったのでそれを歌うことにした。
せっかくなのでツイキャスをしてみたら、歌い始めてからすぐに5人が入ってきたが、歌っている最中に4人減ってしまった。
ちょっと自信があっただけにへこんだ。
 
あとの一人がずっと残っててくれたから、一枠が終わるまでは放送し、それが終わると録音に切り替えた。
ここだけの話、俺は自分の歌った録音を聞くのが大好きだ。
しかも聴いてると落ち着いて眠くなる。ナルシストなのかもしれない。
 
 
 
  
 
 
 
それからほぼノンストップで二時間半ほど歌い続け、喉が死にかけた頃、醜い豚に銭を投げつけカラオケを出た。
自動ドアをくぐると、冷たく澄んだ空気と黄金色の光に身を包まれる。
西日が強く、雲は少ない。むしょうに写真が撮りたくなるような、そんな午後だった。
駅まで歩く途中、どこで写真を撮ろうか考えた。
真っ先に思いつくのは金沢だが、なんだかんだ金沢はつまらない。
あそこ駅前のフォーラスで飯食うか映画見る以外にすることあんの?むしろ小松の方が楽しくね?(煽り)
 
まあ、ということで俺は夕日が焼けることを想定して、海に行くことにした。
我ながら良い案だ。
 
歩きスマホをしながら海に近い駅を調べて、駅で240円の切符を買った。
小松からほんの3つか4つほど離れた美川という駅だ。
 
電車に乗ると美川まではすぐだった。
とりあえず海を目指して歩く。カメラを下げた首は重いが、足取りは軽い。
何の変哲も無い道路。信号。家。
 
大して面白くないなぁなんて思いながらふと交差点で右側の路地に目をやると、なんか良い感じの道があった。俺の語彙が貧弱なんじゃない。なんか良い感じの道があったのだ。
 
俺は迷わずその道に進む。運よく方角的に海から遠ざかりもしなかった。
 
うどん屋、古びた自転車屋に織物屋、いろんなお店がある。
うーん、良い感じだなぁ。なんて思いつつ歩いていると、店の前に黒いセーラー服を着た女の子二人が座っていて、数秒間目があった。
向こうは二人揃って俺の顔を見て笑っている。何が面白いのだろうか。
 
俺は立ち止まって言った。
 
「海ってどっち方面かわかる?」
 
 
 
こうして黒いセーラー服の女の子二人が仲間に加わった。
 
 
 
俺が「高校生だよね?何年生?」と聞いて、
中学生ですよww二年生w」と言われた時はびっくりした。
 中学校でセーラー服って珍しい。
 
しばらく歩きながら会話をして俺の人柄を見定めると、彼女らは「めっちゃ高橋君に似てるwww」と言って俺を煽りだした。
俺は、「そうか、高橋君は将来有望だな」と言ったが、ひたすら笑われるだけだった。
女生徒に笑いものにされるこの感覚、ああ懐かしい。
 
海までは歩いて10分もしないで着いたが、海岸に近づくと二人はふと立ち止まり、着いてこなくなった。
どうしたのかと思い彼女らに近づくと、小声で何かを言っているのが聞こえた。
「うわ、バスケ部の三年じゃん」
「最悪。まじファック」
 
おお、中学生っぽい。
穢れ無き心のJCから発せられる汚い言葉っていいよね。尊い。
 
 
仕方なしに俺が一人で見に行くと、学ランの男子二人とスカートを脱いで下が体操着になっている女子三人がテトラポッドの影で話をしていた。田舎のリア充クッソ羨ましいなと心の底から思った。
 
JC二人が海に近づきたがらないので、ちかたなく遠回りをして離れたポジションを目指した。
 
 
「こっちから海行けますよ!」と言うJCに俺は着いて行く。首に下げた5D3で写真を撮りながら。
傍から見たら完全に事案だ。というか事案?
 
 
「うわぁ虫きもっ」「トンボきもっ」ととにかく汚い言葉を連呼しながら、秋色に染まりつつある森の中の道を歩いていく女子中学生。とてもほほえましい。
 
 
暗く細い、高速道路の下を通るトンネルを抜け更に階段を上ると、そこには夕日になりかけた強い西日に照らされた海岸が待ち受けていて、興奮した少女たちは俺を置いて海を目指し走っていってしまった。
逃げられる前に必死でシャッターを切ったが、一瞬の出来事で設定をあわせている暇が無く露出オーバーになってしまったのは本当に無念である。

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俺はすぐさまダイヤルを回しシャッター速度を速める。そしてファインダーを覗きながら二人を追いかけ、夕日をバックに立ち止まった二人を撮りまくる。
「なんかめっちゃ撮ってんだけどwwww」と爆笑しているがそんなことはお構いなしだ。
 
とにかく、俺は興奮していた。
夕日に煌く海をバックにセーラー服を着た女子中学生の写真を撮るって、今考えても最高のシチュエーションすぎる。
しかも何故かJCはこのタイミングで勝手に指きりげんまんし始めた。
その発想は無かった!
つい感動して、「君たちは素晴らしいモデルだ!」って言ったら笑われた。
この子達はとにかく何を言っても笑ってくれる。女子中学生は天使なんだろうか。
 
 

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今いる場所と砂浜には少し深い谷があって、俺は少女たちに「危ないから遠回りをしよう」と提案した。
すると少女たちは手をつないで歩き出した。
うおおおおおおおおおお、またもや想像の上をゆく!えくせれんっ!
心の中で叫びながらシャッターを切る。
JC最高!
 

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海に近づく為少女たちは段差を乗り越える。俺はアングル低めでシャッターを切る。
 
 

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海沿いには変な砂利の山があって近づくことができなかったので、俺たちは石段に腰掛けた。
奥の方ではまた別の中学生カップルがいちゃついている。というか彼女が彼氏を膝枕してる。
それを見たJC二人は「いいなぁ」なんて言っていて、それを見て俺は(いいなぁ...)と思った。
 
「14歳、思春期真っ只中だもんね」
と、俺は思ったことをそのまま口に出す。
 
するとJCは目を輝かせ、「中学の頃彼女いました?」と俺に聞く。
 
俺が19年間彼女無しであることを伝えるとすごいびっくりして、
「今好きな人はいないんですか?」ときいてきた。
 
(その質問いいなぁ...)なんておもった。
好きな人・・・いい響きだなぁ。
もう俺にまともな恋愛をする機会が残されているのか分からない。
19歳で何を言ってるんだと思うかもしれないが、現実はそんなもんだってことを俺は痛いほど知ってる。
 
この世に実る恋など存在しない。
 
俺が自嘲気味に「まず職場におばあちゃんしかいないからねw」と言うと、なんかすごい同情された。
きっと恋愛至上主義である女子中学生にとって、19歳にして生まれて一度も恋愛を経験したことがないというのは不幸の極みなのだろう。
俺は別に不幸じゃない。ただ幸福を知らないだけなんだ。
 
 
それにしても、女子中学生の会話を聞いていると、自分がもう大人になってしまったこと、もう子供ではないことを強く実感させられた。
俺の目に映る世界はもうあの頃のように輝いていないんだと思って悲しくなった。
 
 
少女たちに撮った写真を見せると、「え!すごい!ほしい!」と言ってくれたので、メールアドレスをきいたら「ちょっと待ってて、書いてくる!」と言ってリュックの方へ走っていった。
彼女らの移動の基本は走りなんだなぁ。まるでよつばとのよつばだ。
 
一生懸命紙にメールアドレスを書く少女の写真を撮る。
 
この時必然的に俺はJCと二人きりになっていて、一言二言会話をしたが内容は忘れた。
 
夕日が焼けることなく雲に隠れてしまい、暗くなる前に帰ろうということで俺たちは海岸を後にした。
 
 
「今日はおかげで楽しかったよ、ありがとう!」と言って二人と別れ、帰った。おわり。
 
 

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最後に写真論。
 
モデルに指示をしてなにもかも自分で思い描いたように撮れたら良いかもしれない。
けど、それで本当に良い写真が撮れるのか?
 
モデルが撮影者の想像の上を行き、撮影者はその瞬間を逃さない。
 
 
それこそが本当に良い写真を生み出す唯一の方法なんだと俺は思う。 By拓二郎