Takumi’s blog

文章にして輝く思い出

先輩が去った

ちょっとうざくて、すごく優しい先輩だった。

 

俺の摂取したアルコールの半分以上は先輩に無理やり飲まされたもので、俺の私服の半分以上は先輩に貰ったもので、俺が一年間で行った外食の半分以上は先輩の奢りによるものだった。

ナンパの仕方も教えてもらったけど、一度も成功はしなかった。

 

先輩は年齢不相応にしっかりしていて仕事もできて人気もあって、けれどいつも孤独で、寂しそうにしていた。

 

そんな先輩に親近感を感じて、俺は慕っていた。

 

石川から去る前日の夜、俺は寝不足なのも構わずに、お客さんに食事を出し終えたら、沢山の洗い物をほったらかしてタイムカードを切って、コンビニで酒を買って先輩の部屋に行った。

 

「おー終わったか、早かったな。ピザは頼んどいたけど、まだ届いてないよ」

「お疲れ様です。飲み物は買ってきましたよ」

 

俺が先輩のPSVRをやっている間にピザが届いた。

 

先輩は前日に飲みすぎて二日酔いだった為、俺が念のため買っておいたいろはす(梨味)で。

俺はほろよいで乾杯をした。

 

ピザを食べながら、先輩が借りてきた「マイ・インターン」という映画を見た。

面白くて、最後まで飽きずに集中して見ることができた。

 

見終わってまたしばらくPSVRをやって、その後は寝っころがって、自分たちの事について色々と話した。

 

自分たちの育ちの悪さについてとか、お互いの考察とか、未来に対する不安とか、基本的にはネガティブな話で、高校時代の恋愛話なんかもしたりして、気がつけば俺は出勤の時間になっていた。

 

 

「我々に感動的なお別れはできませんね」

「そうだね」

「でもお世話になったっていう感謝の気持ちはちゃんとありますよ」

「おお、そうか(笑)」

「二年間お疲れ様でした。群馬でも頑張ってください」

「土屋君も頑張れ。たぶんまた会うでしょ」

「二年後くらいに会いましょう」

「そんくらいが丁度いいね(笑)」

「それじゃあ、おやすみなさい」

「おやすみ!」

 

そうして俺は先輩の部屋を去った。

 

会社まで歩いている途中、先輩との思い出が頭を駆け巡って、ちょっと泣きそうになった。

俺はドライな人間で感情が豊かじゃないから、あんまり悲しい気持ちも湧かないけれど、これから先、より一層つまらなくなるって事は分かった。

 

俺は先輩に色々なことを教えてもらい、先輩というもののお手本を教えてもらった。

俺から先輩には何も返せなかったけれど、今度は俺が先輩になって、今まで貰ったものを受け継いでいこうと思ったけれど新入社員は一人もいない。

 

 

おわり。