Takumi’s blog

文章にして輝く思い出

現実味の無いリアル

三日間埼玉に帰っていたのはもう2週間以上も前の話で、それから今までの間、その三日間の出来事を何度も何度も頭の中で反芻して、感傷に浸っていた。

 

親と縁を切った俺には故郷と言っても居場所は無くて、実家には顔も出さず、二日間ネットカフェに泊り込んだ。

三日目はネットカフェを使わずに、生まれ育った故郷を懐かしもうと、朝まで川越を歩いた。余所者の俺に吹く夜風は、思っていたよりも冷たかった。

俺にはもう、この世界のどこにも安心感を得られる場所は無いんだと知った。

 

三日間の幸福という小説があるが、まさにこの三日間は俺にとって幸福としか言いようが無いものだった。

卒業したら二度と会えなくなってしまうであろう部活の後輩と、それからお世話になった福田先生。それからもう2年近くも会っていない同級生達に会いたくて、文化祭には絶対に行きたいと思っていて、土日だったけれどなんとか連休を貰うことができたので、当日の朝、始発の新幹線に乗って川越へと向かった。

俺の高校で得た数少ない友人のT君と合流する予定だったが、俺の方が早く着いてしまった為、一人で文化祭へ乗り込んだ。

クオリティの低い装飾、だらしのない恰好、立ち居振る舞いの生徒達。

それで良い。自分が楽しむことだけを考えろ。今日という日を目いっぱい楽しんでくれ。

我々一般客にとってはただの祝日だが、君たちにとっては今日が一生の宝物なのだから。

母校の後輩にかつての自分たちの姿を重ね、俺達がもう二度と戻ることのできない世界にいる若者に羨望の眼差しを向け、その輝きに思わず目を細めた。

 

無事T君と合流。

後輩の姿を探し廊下を歩き続ける。

しかし一向に姿が見当たらない。

まあその内に会えるだろうとぶらぶらしていると、不意に廊下の角からウエディングドレスを着た後輩が飛び出してきた。

純白のドレス。

まばゆいほどの白。透き通る肌。

二年前とは見違えてしまうほど綺麗になった後輩になんと声をかけたらいいかわからず、思わずたじろいだ。

「・・・・あっ、先輩!」

いくつかの休符を経て、俺に気づく。

「や、久しぶり」

「来てたんですか?わー!本当に久しぶりですね!」

「去年はちょっと忙しくてね...それより、ウエディングドレス素敵だね。結婚するの?」

「これファッションで作ったんです。さっきまで体育館でファッションショーしてたんですよ」

俺の冗談を華麗にスルーする後輩。

「へぇ。よくできてるじゃん。自分で作ったんだ?」

「そうなんですよぉ。直前までかかっちゃって、裏側とか結構ほつれちゃってるところもあるんですけどね」

そう言いながら微笑む顔は、二年前と変わらないなぁと思った。

「ところで先輩、石川で彼女はできました?」

「彼女できねえよ・・・」

「へ~、そうなんですね」

彼女は嬉しそうに、小バカにしたように笑う。

「あざみ!ファッションショーお疲れ!」

後輩の友達らしき、可愛らしい女子生徒がやってきた。

「お疲れー。あ、こちらは写真部の先輩。かっこいいでしょ?」

「う、うんカッコイイネ」

と、後輩の友人。

「こらこらやめなさい、完全に棒読みになっちゃってるから」

「そんなことより、集まった方がいいんじゃない?」

「あ、そうだ。先輩、それじゃあまた後で」

 

こうして後輩を見送った。

 

その後同級生や担任の福ちゃん、それから美術のエロいおじいちゃんと会って話すことができた。

とても有意義な時間を過ごすことができて、本当に来てよかったなと思った。

 

その後は佐藤の家に行って、佐藤の車に乗り、クレアモールのいきなりステーキに行った。(途中で城本を拾った)

 

俺は前日に夜遅くまで仕事があったせいもあり、おなかがいっぱいになった途端眠気が押し寄せてきて、佐藤の車で眠りに落ちてしまった。

目が覚めて、さてこれからパフェでも食いに行こうかと話していたが、高校3年生の時同じクラスで仲が良かった女友達が来てくれるという事だったので解散して、俺は一人、川越駅へと向かった。

 

その途中、階段を上ろうとしたら、前から降りて来たおばさんが派手に転んで頭と腕を思いっきり地面に打った。

俺も一緒にいたおばさん達もパニックになってしまった。

一人のおばさんがすぐ近くの交番に駆け込んだのを見て、俺は目の前のスーパーに走り、レジで氷を二つ貰い、急いで持って行った。

着いた時には警官が二人いて、警官は救急車を要請している様子だった。

俺は、「良かったらこれ、使ってください」と言って氷の入った袋をおばさんに手渡した。

おばさんはダラダラと血を流しながら、笑顔で「ありがとう」と俺に言った。

俺の持ってきた氷の袋なんて何の役にも立たないかもしれないけれど、俺の親切心が、少しでもおばさんの気持ちを楽にすることができたなら良かったかなと思った。

それ以上に何かできる事があったかもしれないけど、俺にしてはよくやった方だと褒めてあげたい。

 

とまあそういう事があって、スマホを見たらラインの通知が来ていた。

「交番の前にいるよ!」

すぐ近くだった。

 

「ごめん、お待たせ」

「ううん、今来たとこだよ」

「そんじゃ行くか」

「うん・・・って、どこ行くの?」

「まあ歩きながら考えよ」

 

飽きてきた。

また後で続き書きます