ひできのブログ

基本的には自分語りです

コーヒー一杯のイマージュ

 

地味なメタルフレームの眼鏡と文庫本をテーブルに置き、彼女はコーヒーカップに口つける。「・・・よくわかんないけど、美味しい気がする」「ね。なんというか・・・深みがあるよね。よくわからないけど」僕がそう言うと、彼女はニタリと笑って「絶対よく分かってないでしょ」と僕をおちょくった。やれやれ。まったくもってその通りだ。言い返す言葉が見当たらなかったから、彼女の文庫本に挟まっていた栞を引き抜いてやった。「あの、小学生みたいな事しないでもらえます?」僕を睨みつける彼女。まるで変顔をしているみたいで笑いそうになる。「本当に謝謝。アニョハセヨ」僕がそう言うと彼女は「謝ったから許す」と言って、またニタリと笑った。謝謝もアニョハセヨもごめんなさいという意味ではないのだけれど、気付かれなくてモーマンタイだ。 僕はにやけそうな口元を隠すためにコーヒーを飲んだ。キリマンジャロの芳醇な香りが、僕らを包み込んだ。